2023年10月3日、慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師、同内科学教室(循環器)の香坂俊専任講師らは、外来での心臓リハビリテーション(運動療法)ができないような心不全患者におけるフィジカルトレーニング支援・教育プログラム(SaMD)の有効性及び安全性を評価するための探索的医師主導治験(多施設共同探索的ランダム化比較試験)を開始しました。本治験は、慶應義塾大学病院臨床研究推進センターの支援のもと、慶應義塾大学病院で実施されます。
心不全は、心臓の機能が低下して、体に十分な血液を送り出せなくなった状態で、薬などの適切な治療に加えて、運動や食事など生活習慣の改善を目指した心臓リハビリテーションを行うことが重要とされています。しかし、心臓リハビリテーションにおける外来での運動療法は、心不全患者の10%以下にしか行われていません。したがって、通常の診療で行っている通院での運動の実践とは別の方法で、患者の在宅での運動を評価・可視化し、かつ心不全の改善に有効な運動支援の方法が求められています。
そこで、本研究グループは、心不全患者の運動を支援するアプリケーションである「運動支援アプリ」を開発しました。患者がFitbitスマートウォッチを常時装着して、そこから歩数や脈拍数などの運動の状況の情報を「運動支援アプリ」が取得し、体重や生活の質のアンケート情報と合わせて、本人に最適な運動を支援するアプリケーションとなります。同アプリは慶應義塾大学医学部と共同で本アプリを開発している株式会社グレースイメージングより提供されます。
今回の治験によって、医療機器としての「運動支援アプリ」の承認に向けた開発を加速させます。現在、心不全患者の90%以上に、保険医療に即した適切な運動療法を届けられていない状況です。新しい医療機器を開発することで、そのような心不全患者がより豊かな生活を送れるような社会の実現が期待されます。
なお、この医師主導治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業)の研究課題「心血管疾患に対する、運動支援プログラムに関する研究開発」(研究開発代表者: 慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター勝俣良紀専任講師)の一環として行われています。