慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の天谷雅行教授、江上将平共同研究員、東京女子医科大学の山上淳准教授(研究当時:慶應義塾大学医学部皮膚科学教室専任講師)らのグループは、新生児線状IgA水疱性皮膚症において、病気を起こす原因であるIgA抗体が母親の母乳内に存在することを発見しました。
新生児線状IgA水疱性皮膚症は、表皮と真皮の間の境界部(表皮真皮境界部)に結合するIgA抗体を介して水疱・びらんを引き起こす稀な疾患で、皮膚のみならず粘膜気道にも病変がよくみられ、致死的な病態を引き起こします。新生児の自己免疫性皮膚疾患では母体の血液中にある病原性抗体(自己抗体)が胎盤を介して胎児に移行し病気を引き起こす例が多い中、線状IgA水疱性皮膚症では過去の報告でも母体の血液中に病原性抗体が存在せず、その由来は不明でした。
本研究では、病気にかかった新生児(患児)の母親の母乳の中に表皮真皮境界部に結合するIgA抗体が存在することを証明しました。また、患児皮膚に沈着しているIgA抗体が、血液中にある血清型ではなく、母乳内に存在する分泌型であることを見出し、母乳を介して患児にIgA抗体が移行していることを証明しました。
新生児IgA水疱性皮膚症においては、速やかに母乳栄養を中止することで患児の重症化を防ぎ、救命に繋がりうることが示唆されました。
本研究成果は、2021年7月14日(米国中部標準時)に米国科学誌『JAMA Dermatology』のオンライン速報版に掲載されました。