このたび、慶應義塾大学医学部解剖学教室の仲嶋一範教授、大学院医学研究科の松永友貴(大学院生)、野田万理子元医学部特任助教らの研究グループは、九州大学および名古屋大学と共同で、脳が形成される過程において神経細胞同士が接着力を強めて集合する新しい「しくみ」を発見しました。
知覚、思考、記憶など、脳の高次機能を司る大脳皮質では、神経細胞がきれいに6層に配置されています。発生過程にこの層構造が正しく形成されないことが、さまざまな精神神経疾患の背景に存在している可能性が近年注目されています。層構造が正しく作られるためには、リーリンと呼ばれるタンパク質が必須であることが知られていましたが、リーリンの機能の詳細は分かっていませんでした。
仲嶋教授らの研究グループは、リーリンが神経細胞同士の接着を一時的に強くすることを発見し、その分子機構を見出すとともに、この現象が脳の層構造を正しく作るために重要であることを明らかにしました。
リーリンは脳の形作りだけではなく、統合失調症、自閉症、てんかんなど多くの精神神経疾患との関連が示唆されています。今回の研究成果は、これらの疾患の病態解明や治療に有益な情報をもたらすことが期待されます。
本研究成果は、2月6日(米国東部時間)の週に米国総合学術雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」で公開されました。(いつでも報道していただけます。)
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