慶應義塾大学医学部内科学(消化器)教室の金井隆典教授、長沼誠准教授らを中心とした全国33施設の多施設共同研究グループは、植物由来の染料が活動性の潰瘍性大腸炎の治療に有効であることをプラセボ(偽薬)対照臨床試験において科学的に実証しました。
この藍色の染料は青黛(せいたい)と呼ばれる生薬で、これまでに金井教授らは青黛の経口投与が活動期の潰瘍性大腸炎患者において、従来の治療薬と異なる仕組みで高い有効性を示す可能性を、少数例の単施設研究で示唆してきました。本研究では青黛の用量を段階的に設定した、プラセボ(偽薬)を含む臨床試験で、青黛は70~81%という高い有効性を示しました。
本研究で青黛の高い有効性が示されたため、今後さらなる動物実験を含む研究を行い、安全に使用できるよう治療開発を推進していきます。
この成果は、今後の潰瘍性大腸炎の完治を目指した病態の解明と、新規治療法開発への確かな道筋になることが期待されます。今回の研究成果は、2017年11月22日(米国東部時間)米科学誌である『Gastroenterology』のオンライン速報版に掲載されました。
なお、本研究とは異なりますが、インターネットなどの不確かな情報をもとに青黛を個人入手し、民間療法として使用する潰瘍性大腸炎患者の存在が問題視され、本研究と関連なく青黛を内服した患者が肺動脈性肺高血圧症を発症した事例を受けて、厚生労働省は、自己判断で青黛を摂取せず必ず医師に相談するよう患者を指導すること等について平成28年12月27日に各関係学会等へ注意喚起しました。
本研究グループが行ったものは、安全性、有効性を評価することを目的とした試験であり、患者が自己判断で青黛を使用すべきではないと考えていますが、この注意喚起後、安全性を最優先し、本臨床試験を中断の上、結果を公表したものです。
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