ポイント
・可視光を透過しない黒色ゴム材料の内部状態をテラヘルツ光で調査。
・コンパクトな装置で高速・高精度テラヘルツ偏光計測を実現。
・タイヤや防振ゴムなどの非破壊・非接触検査への応用が期待。
JST研究成果展開事業において、慶應義塾大学理工学部物理学科の岡野真人専任講師と渡邉紳一准教授の研究グループは、高速で高精度なテラヘルツ偏光計測装置を用いた新しい黒色ゴム材料の非破壊検査手法の開発に成功しました。
カーボンブラックが配合された黒色ゴム材料は、タイヤや防振ゴムなどに利用されており、その内部状態を検査する技術の確立が必要ですが、黒色ゴムは、人間の目が感じる可視光や近赤外線、中赤外線も透過しないため、光を用いてその内部状態を非破壊で観察することは極めて困難とされてきました。
今回、幅広い光スペクトルの中で、電波と光の境界にあるテラヘルツ光だけが黒色ゴム材料に対して透過性をもつことに着目し、添加されたカーボンブラック凝集体の並び方を偏光測定によって推測できることを実証しました。さらに、カーボンブラック凝集体の整列の様子から、材料が「どちらの方向に」、「どの程度」ひずんでいるかを推測することにも成功しました。
この分析手法は、外からの力によるゴム材料変形を推測できることを示しており、これまで光では内部調査ができなかったタイヤや防振ゴムの新しい非破壊検査ツールとして期待されます。
本研究は、JST研究成果展開事業産学共創基礎基盤研究プログラム「テラヘルツ波新時代を切り拓く革新的基盤技術の創出」により一部支援を受けて行われました。
本研究成果は2016年12月23日(英国時間)にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の電子ジャーナル「Scientific Reports」で公開されます。
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