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(2025年2月掲載)
Aくん、Kさん
慶應義塾中等部3年生
インタビュアー 江波戸 愼(中等部英語科教諭)
なぜスペイン語を学ぶのか?
──中等部では、2005年から英語以外の言語に触れる取り組みを行っていて、当初からフランス語とスペイン語の講座を開設してきました、その後、中国語、イタリア語、朝鮮語などの講座も開いたことがありますが、この最初の2つは20年近く途絶えることなく続けています。今日は、スペイン語の講座を選択している、2人の3年生にお話を聞きたいと思います。
慶應の一貫教育校の中学段階では普通部、湘南藤沢中等部も英語以外の言語を教えるところもありますが、スペイン語に取り組んでいるのは中等部だけです。
2人が英語以外の言語をやってみようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
A:単に英語以外の言語に触れてみたいと思ったことが一つのきっかけです。あと、いろいろな外国に行った際に、自己紹介だけでもできると友好関係が築きやすいよと、親から言われていたことも大きかったです。
K:私も父が中国語ができるので、英語以外の他の言語にも触れてみたいと思いました。日本語と英語に加えて新しい言語を学ぶことは、その言語を話せるようになるだけではなく、新しい文化を学ぶことができると思いました。その経験を早いうちから積んでおくことで、将来何かに活かせるのではないか、と思ってスペイン語を取ることを決めました。
──今、Kさんの話にあったように、スペイン語を学ぶということは、スペイン語の背景にある文化を学ぶことにもなりますね。授業でそれを実感したことはありますか?
A:授業ではありませんが、実際にスペインに一度行った時に、話し方が思ったより柔らかいなと感じました。
K:実際に学んでみると英語と似ている点もあると思いました。ただ、会話では特に質問された時に、何を言っているのか全然わからないです。英語と似ている部分はあっても、言語が違うと文化や話し方がまったく違うと感じています。
また、以前、スペインの映画を見た時に、人間関係やコミュニケーションの取り方などは、国が違っても大きな違いはないと感じた反面、食べ物や服装、町の雰囲気はかなり違うと感じました。
──そうですか。言語人口で見てみると、世界で一番話されているのは英語で15億人、2番目の中国語で14億人、その次が実はスペイン語で、約5億人いると言われています。
このように世界でもメジャーな言語なんですが、日本での日々の暮らしの中で、スペイン語を聞く機会はありますか?
A:日本でスペイン語に触れたことはあまりないですね。
K:アメリカの映画の中で、スペイン語が出てくる場面は何度か見たことがありますが、日本ではないですね。むしろこうした授業を取らないと、なかなか触れる機会がないと思います。
──実はアメリカ大陸、特に中南米の人たちはスペイン語を話す人がほとんどです。例えば野球選手やサッカー選手のインタビューでも、英語ではなくスペイン語で受け答えをすることが多い。そういった点でも、メディアを通して触れる機会が多い言語と言えると思います。
では、スペイン語と英語とはどんなところが似ていると思いますか?
A:発音と基本的な文体、あと、アルファベットを使うのでそこは似ていますよね。英語にないアルファベットもありますが。
──そうですね。でも違うところもたくさんあって、文法で言えば主語を言わないこともありますね。語順もかなり違いますね。
スペイン語の活かし方
──スペイン語圏の国に行ってやってみたいことはありますか?
K:チャンスがあれば、少しでも学んだことを活かせるか、試してみたいと思いますね。英語は将来使うことが多いと思うんですが、スペイン語はなかなか使うケースがないと思うので、この授業で学んだことがどこまで通じるか、現地で確かめてみたいですね。
──具体的にどんなことをしてみたいですか?
K:まずは挨拶ですね。それから、買い物とか、何か困った時に、スペイン語で質問できるようにしてみたいですね。
──実際に授業を通して、スペイン語での会話に対する自信はついてきましたか?
A:自己紹介はできるかなと。簡単な会話であれば話せると思います。自信はないですけど(笑)。
──スペイン語の先生はどういう雰囲気ですか?
A:とても話しやすいです。よくできました(excelente!)とかをスペイン語でよく言ってくれるので、現地の雰囲気がわかります。よくわからなくてもしゃべることができる雰囲気があります。
K:英語も日本語もですが、自分で話すということはすごく難しくて、それよりは聞いたことが何となくわかるということの方が身に付いたかな、と思います。
──母語話者の先生がしゃべったことがわかるのは大きいですね。アウトプット(自分がしゃべる、書くこと)はもっと難しいですね。これから先、高校へ行って、アウトプットを実践していく、自分を表現することを実践してほしいと思います。
バイリンガルの重要性
──私は今、大学の外国語教育研究センターで副所長を務めていますが、現在、外国語教育研究センターでは、副言語をテーマに活動しています。というのも、ヨーロッパの人たちは移民の人が多く自分の国に入ってくることもあり、二言語を使って生活することが多いからです。中等部生にはスペイン語の学習を通じて、そうした点も感じてほしいと思っています。
先ほど、英語とスペイン語は似ているという話がありましたが、違う点はどこか感じましたか?
A:発音の強調の違いは感じました。英語よりもRなどの発音が強いなと。
K:巻き舌が強いですよね。
──そう。フランス語も強いですが、スペイン語はもっと強いですよね。それがスペイン語らしさでもあります。ボキャブラリーはどうでした?
K:私は文法よりも、ボキャブラリーの方が似ているところが多いと感じました。似ている単語はすごく似ています。ただ、全然違うものもあって、それは難しいなと思いました。
──似ているグループとそうでないグループの違いは感じましたか?
A:はい、感じました、例えば、zero がcero になったりするところはとても似ていると思いました。
K:テストで、絵と単語を結びつける問題があったのですが、半分くらいは英語に似た単語でわかるのですが、残り半分は全然わからない。普段私たちが触れているものや学校の施設の名前などは似ているものが多いと感じました。
──英語とスペイン語の似ている単語を比べた時、どちらが先に生まれたと思いますか?
A:どうしても僕たちは英語を先に習っているので、英語が先かと思ってしまうのですが……。
──色々な言語を勉強すると、実はある単語がフランス語が発祥だったりするのがわかってくるのが面白いですよね。そういう語源を辿ったりするのもおもしろいと思います。
授業を通して学べたこと
──授業で一番印象に残ったことはなんでしょう?
A:先生の反応が印象的でした。excelente──英語でいうところのexcellentにあたる言葉ですが、僕はスペイン語の方が好きです。あとは、¡Vale! とか ¡fenomeno! という感情を表わす言葉を先生がスペイン語で使ってくれると嬉しくて、自分でも使ってみたいと思いました。Excelente はスペイン語の発音の方が好きになりました。
K:授業では実際に使ってみようというところから始めるので、自分が疑問に思っていたことを実践で使いながら学べたことですね。単語一つとっても、どうしてこういう発音をするんだろう? という疑問を実際に話すことでその答えを見つけていく。良い意味で疑問を持ちながら勉強できたことは印象的でした。
──すごく貴重な体験でしたね。では最後にスペイン語以外でもう一言語、学ぶとしたら何語を学びたいですか?
K:中国語ですね。父が学んでいたので自分もやってみたいですし、スペイン語が英語と似ているように、中国語も日本語と似ている部分があると思うので、学んでみたいです。あと、仕事などで海外の人とやり取りする際に、英語の次に使えるのが中国語だと母から聞きました。
A:僕はフランス語です。せっかくスペイン語を学んだので、まったく別のものではなく、線で繋がっているような言語をやりたいと思います。
──今回スペイン語を学んだ経験を他の言語を学ぶ際にも活かしてもらえると嬉しいですね。
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