慶應義塾大学基礎科学・基礎工学インスティテュート(KiPAS)および同大学院理工学研究科の高藤華助教(研究当時:KiPAS研究員)と同大学理工学部の安藤和也准教授(KiPAS主任研究員)らは、軌道流の伝導を制御することに成功しました。
電子には電荷・スピン・軌道という3つの性質があります。電荷の流れである電流の制御を基盤として、エレクトロニクスはこれまで発展を続けてきました。また、スピン流と呼ばれるスピンの流れを生み出すことができるようになり、これを制御しようとする試みが、次世代の電子技術であるスピントロニクス研究の発展に寄与してきました。さらに近年、電流とスピン流に対応する軌道流の重要性が明らかになり、最近のKiPAS研究などによって、軌道流を生み出す手法に関しては大きく進展してきました。しかし、生み出した軌道流を制御する方法はこれまで知られていませんでした。
今回、物質中の原子配列の状態によって軌道流を制御することに初めて成功しました。この研究成果は、軌道流の本質的理解に繋がるだけでなく、軌道流を用いた電子デバイス設計に重要な知見を与え、エレクトロニクスとスピントロニクスに続く、新たな電子技術の展開に貢献するものです。
本研究成果は9月27日午前10時(英国時間)に英国科学誌『Nature Physics』オンライン版に掲載されました。