慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師、同整形外科学教室の大川原洋樹研究員らと、株式会社グレースイメージング(代表取締役CEO 中島大輔)の共同研究グループは、常酸素環境と同様に低酸素環境下での運動においても、ウェアラブル汗乳酸センサを用いて汗乳酸値をリアルタイムにモニタリングすることで簡便に求められる汗乳酸性閾値(sLT)が、嫌気性代謝閾値(AT)の指標として優れた信頼性・妥当性を有することを明らかにしました。
運動は万病の薬といわれ、病気の有無に関わらず健康を維持するために重要です。近年、低酸素トレーニングが、より低負荷で効率的なトレーニングができると認識され、都市部を中心に、トレーニングジム等にも低酸素環境のトレーニング室が併設されるようになってきています。しかし、低酸素トレーニングでどの程度の強さで運動をすべきかについては、その効果判定・運動負荷の指標であるATを測定する必要がありますが、一般的には難しいとされています。ATを求めるには、高額で大掛かりな呼気ガス分析装置が必要で、さらに解析には専門的な知識を要するためです。そのため、広くスポーツジムなどに適用することが可能な、より簡便なAT指標の計測手法の開発が必要とされてきました。
今回の研究では、軽量で簡易的なウェアラブル汗乳酸デバイスを用いて得られたsLTが、低酸素環境下でも、ATの有用な推定値を決定できることが示されました。この評価手法が広く低酸素トレーニングに導入されることで、個別性に応じた適切な低酸素トレーニング環境を提供し、疾病予防や治療、スポーツパフォーマンスの向上など、多様なニーズに応える新たな運動戦略の立案に寄与していくことが期待されます。
この研究結果は2023年12月21日(日本時間)に Scientific Reports 誌で公開されました。