京都大学大学院 医学研究科 がん免疫総合研究センター マルチオミクスプラットフォームの、前田黎 技術補佐員、関夏実 研究員、杉浦悠毅 特定准教授(研究開始時:慶應義塾大学医学部医化学教室専任講師)らの研究グループは、SARS-CoV-2(COVID-19の原因となるウィルス)に感染した患者さんの血清を用いて、軽症のまま回復した人と重症化した人を感染初期に比較し、重症化リスクを予測するためのバイオマーカーとなる代謝産物を明らかにしました。
COVID-19は世界各国でパンデミックになり、多くの死者を出しました。感染しても、無症状や軽症で済む人もいる一方で、肺炎が進行して重症化する人もいます。重症化しやすい人には、感染後迅速に治療を開始すべきですが、重症化するかどうかを感染初期に予測することは困難でした。今回、研究チームは血清中に含まれる「代謝産物」に着目し、質量分析装置を用いて、重症化のバイオマーカーとなる物質を探索しました。その結果、軽症の人と、後に重症化する人では、アミノ酸分解物の量が感染初期の段階で異なることを発見しました。
今回発見した代謝産物は発熱などの発症から5日以内の患者血清で検出されました。従って感染初期に症状が出て病院を受診した際に、血液検査で重症化リスクがあるかどうかを予測できることが期待されます。
本成果は、2023年12月20日にイギリスの国際学術誌「 Nature Communications 」にオンライン掲載されました。