国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院は、東京慈恵会医科大学附属病院、慶應義塾大学病院の3機関多施設共同で、薬物療法に反応しない双極性障害のうつ状態の患者さんを対象に、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS :repetitive transcranial magnetic stimulation)による臨床研究を先進医療Bで実施しています。
双極性障害は抑うつエピソード(気分の落ち込みや興味・関心の喪失などが生じる状態)とその対極にある躁病・軽躁病エピソード(気分が異常に高揚する状態)が現れ、これらをくりかえす疾患と考えられています。双極性障害の経過の中で、抑うつエピソードの占める期間は長いことが知られており、薬物療法が奏効せずに治療に難渋することがあります。実際の臨床場面では、治療抵抗性双極性障害の抑うつエピソードに対して有用で利用可能な治療法が必要とされています。
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、ファラデーの電磁誘導の法則を応用して生体を非侵襲的に直接刺激する技術です。コイルに瞬間的に電流を流し、周囲に形成される変動磁場を伴う渦電流によってニューロンを刺激します。TMSを反復して行う治療法を反復経頭蓋磁気刺激(repetitive TMS:rTMS)と呼びます。
これらの背景を踏まえ、3機関多施設共同で、薬物療法に反応しない双極性障害のうつ状態の患者さんを対象に、rTMSの有効性と安全性を検証し、医療機器の薬事承認および保険適用を目指します。