理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの大伴直央大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時、現客員研究員)(慶應義塾大学医学部医学研究科後期博士課程4年(研究当時))、寺尾知可史チームリーダー(静岡県立総合病院免疫研究部長、静岡県立大学特任教授)と慶應義塾大学医学部整形外科学教室を中心とした日本側彎(そくわん)症臨床学術研究グループの共同研究グループは、大規模な日本人集団の遺伝子多型データに基づき、思春期特発性側弯症(Adolescent idiopathic scoliosis: AIS)の発症と肥満の指標であるBMIが遺伝的に負の因果関係にあることを明らかにしました。
本研究成果は、AISの発症に関する病態の解明につながると期待できます。
AISは脊椎が3次元的にねじれる原因不明の疾患であり、10歳以降の主に女児に見られます。遺伝的要因と環境要因が関連する多因子遺伝疾患と考えられていますが、発症の原因は不明な点が多く、病態の解明が急がれています。
今回、共同研究グループは、AISの研究コホートとしては世界最大規模の日本人集団における遺伝子研究の結果とバイオバンク・ジャパンが保有する日本人のBMIに関する遺伝子研究の結果を用いて、「メンデリアン・ランダマイゼーション(MR)」という手法により、AISとBMIの遺伝的な因果関係について解析しました。その結果、遺伝的にBMIが低くなりやすい人(太りにくい人)はAISの発症リスクが高いことが分かりました。同様の傾向が欧米人にもあることが分かり、低BMIとAISの発症リスクに遺伝的な因果関係があることを初めて明らかにしました。
本研究は、科学雑誌『 Frontiers in endocrinology 』のオンライン版(6月20日付:日本時間6月20日)に掲載されました。