慶應義塾大学大学院理工学研究科の金子 美由起(修士課程2年)と同理工学部物理学科の岡 朋治教授、国立天文台、神奈川大学からなる研究チームは、天の川銀河(銀河系)の中心核「いて座A*(エースター)」近傍に孤立して存在する「おたまじゃくし」分子雲を発見しました。この分子雲は、天球面上で円弧状の形態を有し、その円弧に沿って視線速度が単調に変化していることが明らかになりました。この空間速度構造は点状重力源周りのケプラー軌道によって極めてよく再現され、その重力源の質量は太陽の10万倍と推定されました。また他波長において対応天体が存在しないことは、この点状重力源が高密度の星団などではないことを意味します。現時点では、点状重力源が中質量ブラックホールである可能性が最有力視されます。本天体は、分子ガスの分布・運動の解析から発見された中質量ブラックホール候補天体の中で、最も確度が高いと考えられます。
本研究成果は、1月10日発行の米国の天体物理学専門誌『The Astrophysical Journal』に掲載されました。