慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室の原英樹特任准教授、金沢大学がん進展制御研究所免疫炎症制御研究分野土屋晃介准教授、京都大学光山正雄名誉教授、米国ミシガン大学医学部病理学講座Gabriel Núñez教授らの国際共同研究チームは、感染症を重症化させる免疫応答の仕組みと毒素産生の関連性を解明しました。この基礎研究の成果は、抗菌薬など既存の感染治療法に代わる新たな治療法の開発につながることが期待されます。
一般的には免疫応答は感染防御に働くと考えられていますが、近年の研究から黄色ブドウ球菌や細胞内寄生菌などの病原細菌および新型コロナウイルスによる感染症を悪化させる炎症応答が存在することが明らかとなってきました。この炎症応答は病原性を示す微生物が感染したときに強く誘発されますが、その仕組みは詳しくわかっていませんでした。
今回研究チームは、代表的な細胞内寄生菌であるリステリアを用いて、病原毒素が細胞膜と相互作用する際にリン酸化酵素を活性化することでインフラマソームとよばれる炎症応答を亢進することを見つけました。さらに、この炎症促進活性が本毒素内の1つのアミノ酸で制御されており、そのアミノ酸に変異を加えるだけで菌はインフラマソームを活性化できなくなり病原性が消失することを突き止めました。
本研究成果は、2022年2月22日(米国東部標準時)に国際学術雑誌『Cell Reports』のオンライン版に掲載されました。