慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室の都築伸佳共同研究員(国立病院機構東京医療センター臨床研究センター聴覚平衡覚研究部研究員)および大石直樹准教授、東海大学医学部専門診療学系耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の和佐野浩一郎准教授らの研究グループは、突発性難聴に関する多施設共同後ろ向き観察研究(研究が開始される前に収集された情報を用いる研究)を実施し、動脈硬化因子が突発性難聴の重症化だけでなく健側(突然の難聴が発症していない耳)の難聴とも関連していること、健側に中等度以上の難聴があると突発性難聴が治癒しにくいことを明らかにしました。また、発症時の抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)の内服が突発性難聴の非治癒(治療後に患側の聴力が回復しないこと)と関連しているという新たな結果が得られました。
突発性難聴患者において動脈硬化因子を評価すること、患側(突然の難聴が発症した耳)だけでなく診断基準に含まれていない健側の聴力も評価することが重要であることが示唆されました。また、抗凝固薬の内服のある突発性難聴患者に対しては、内耳の出血や梗塞(血液が流れにくくなり細胞組織が壊死すること)を疑い、早期の画像検査(MRI)や詳細な聴覚・平衡機能検査を行うことで、具体的な臨床像を明らかにする必要性が示唆されました。本研究により、今後、内耳への血流障害を原因とした突発性難聴の臨床像の解明や適切な画像検査、聴覚・平衡機能検査による内耳出血、内耳梗塞(内耳への血管がつまってしまうこと)の診断方法の確立が進むことが期待されます。
本研究成果は、2022年12月13日(英国時間)英国ネイチャー出版グループの Scientific Reports 電子版に掲載されました。