慶應義塾大学医学部臨床検査医学教室の村田満教授、涌井昌俊准教授、リウマチ・膠原病内科学教室の竹内勤名誉教授、竹下勝助教、先端医科学研究所遺伝子制御研究部門の佐谷秀行教授らの研究グループは、株式会社医学生物学研究所との共同研究により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する中和抗体を自動測定装置で測定するキットの開発に成功しました。このキットは株式会社LSIメディエンス社が製造する国産の自動臨床検査装置STACIA®に搭載可能です。1時間あたり最大270テストを実現し、血清のサンプリングから結果が得られるまで19分以内と迅速に検査を実施することができます。また本キットで測定された検体中の中和抗体価は実際の新型コロナウイルスを用いた感染中和試験と高い相関を認めています。
一般的にウイルスに感染すると、生体内で抗体と呼ばれる防御因子が作られるようになります。抗体はウイルスのさまざまな部位を特異的に認識して結合しますが、感染防御の能力は抗体によって異なります。ウイルスの活性に重要な部位に結合してその機能を阻害し、ウイルスを不活化する能力を有する抗体は「中和抗体」と呼ばれます。
2020年末に、慶應義塾大学医学部、国立感染症研究所、JSR株式会社ならび株式会社医学生物学研究所との産学連携の成果として通常の実験室で使用可能な新型コロナウイルスに対する中和抗体測定キットを開発しました。このキットは手動で測定する方法のため、多検体の処理能力に課題がありました。このたび、ワクチンの普及に伴う多検体の中和抗体測定の需要に応えるため、自動臨床検査装置に搭載可能な新型コロナウイルスに対する中和抗体の測定キットの開発に着手し、成功しました。
本キットは研究用試薬としての実用化に向け、現在、株式会社医学生物学研究所が準備を進めています。新型コロナウイルス感染後の免疫状態の把握やワクチン効果の研究が大きく促進されるものと考えます。