今、世界は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の未曾有の脅威に直面し続けています。この脅威に立ち向かうため、2020年5月に、感染症学、ウイルス学、分子遺伝学、ゲノム医学、計算科学、遺伝統計学を含む、異分野の専門家が集まり、共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」を立ち上げました(https://www.covid19-taskforce.jp/)。発足当初、参加した医療機関は40施設でしたが、医療現場の最前線に立つ医療従事者から大きな賛同を得て、また、新型コロナウイルスに罹患した患者さんからも多大な協力を得て、全国100以上の医療機関が参加する大きなネットワークが形成されました。その結果、2021年4月末の時点で、当初目標にしていた600人を遙かに上回る3,400人以上の患者さんから協力を得られ、アジアで最大の生体試料を併せ持つコホートとなりました。
コロナ制圧タスクフォースは、最先端のゲノム解析を進める中で、アジアで初めて、新型コロナウイルス患者と対照者との遺伝子型を網羅的に比較する大規模ゲノムワイド関連解析を実施しました。免疫機能に重要な役割を担うことが知られている「DOCK2」と呼ばれる遺伝子の領域の遺伝的多型(バリアント)が、65歳未満の非高齢者における重症化リスクと関連性を示すことを発見しました。このバリアントは欧米人ではほとんど認められないことから、日本人を含むアジア人集団に特有の重症化因子の有力候補である可能性が示唆されました。一方で、DOCK2遺伝子領域のバリアントだけでは重症化の集団間の違いを説明することはできず、さらに症例数を増やした解析による追認検証も含めた、今後も更なるゲノム研究の継続が重要と考えられます。
コロナ制圧タスクフォースの活動は、国際的にも広く認知され、国際共同研究グループと共に研究を進めています。世界最大の新型コロナウイルスホストゲノム研究コンソーシアムであるCOVID-19 Host Genetics Initiative(https://www.covid19hg.org/)にアジアで最大の研究グループとして参加し、新型コロナウイルス感染の重症化に関わる遺伝子多型(バリアント)の同定に貢献しました。これらの研究成果は、学術雑誌への投稿に先立ち、投稿審査前の情報をプレプリント・サーバーmedRxivへの掲載を通じて迅速に発信する予定です。
今後もコロナ制圧タスクフォースは、新型コロナウイルスと闘う患者さん、診療の最前線に立つ医療従事者と共に、新型コロナウイルスの克服に向けて、活動を続けていきます。