慶應義塾大学医学部産婦人科学教室の青木大輔教授、岩田卓専任講師、ならびに国際医療福祉大学の河上裕医学部長(同免疫学教室教授、慶應義塾大学医学部先端医科学研究所細胞情報研究部門特任教授を兼任)らは、「子宮頸がんを対象とした腫瘍浸潤リンパ球輸注療法(TIL療法)」について、厚生労働省へ第3種再生医療等提供計画としての届け出を行い、2021年1月5日付で本臨床試験を開始いたしました。本TIL療法は、2019年11月慶應義塾特定認定再生医療等委員会により第3種再生医療等提供計画として適と判定され、2020年12月厚生労働省先進医療会議において先進医療として許可されたものです。本治療ではまず、TIL製剤の原料として、健常人ドナーから末梢血単核球を採取する必要があるため、患者への治療開始は3月を予定しています。
進行・再発子宮頸がんは、極めて難治で、有効な薬剤は限られています。TIL療法は、患者本人のがん組織に含まれるリンパ球と呼ばれる免疫細胞を採取して体外で大量に培養し、患者に戻す養子免疫療法の一種です。TIL療法の注目すべき特徴は、期待される高い奏効率に加え、TIL療法でいったんがんが消滅した場合、その後の再発は少なく、完治する可能性もあると報告されていることであり、従来の治療が効かない患者に希望をもたらす治療法の1つといわれています。しかし、この治療には、高度なTILの培養技術が必要なため、実施可能な施設は世界で約10施設程度にとどまります。河上裕教授らは、このTILの培養技術を日本で確立し、既に2016年に3例の悪性黒色腫患者にTIL療法を実施しました。この結果を踏まえ、今回、最大14名の進行子宮頸がん患者を対象として、TIL療法を実施します。