慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授、吉田慶多朗研究員(研究当時)、名古屋大学の山中章弘教授、生理学研究所の小林憲太准教授、北海道大学の渡辺雅彦教授による共同研究グループは、意欲行動の開始時に、脳神経回路の上流で興奮を伝える神経の活動が抑制されるにもかかわらず、その情報を受けとる下流では反対に神経が興奮するという、新しい脳内情報伝達様式をマウスでの実験で発見しました。
実験動物が自由に行動している最中に、特定の神経細胞の活動を正確に調べる技術の応用によって、この発見がもたらされました。さらに、活動を逆転させる伝達様式を担うのは、パルブアルブミンと呼ばれるマーカー分子を発現する神経細胞であることが判明しました。
パルブアルブミン陽性細胞は、統合失調症などの精神疾患の病態に深く関与する細胞であることが知られています。精神疾患において、今回発見された脳内情報伝達がどのように変化して病態形成・治療に関与するのか、今後の展開が期待されます。
今回の研究成果は2020年6月30日(アメリカ東部時間)、「Cell Reports」(オンライン版)に掲載されました。