慶應義塾大学医学部薬理学教室の竹馬真理子准教授、安井正人教授、同大学グローバルリサーチインスティテュートの田中愛美研究員のグループは、肝臓に局在する免疫細胞マクロファージに発現するアクアポリン3(AQP3)が、肝炎・肝硬変の発症過程で重要な役割をもつことを、肝炎モデルマウスを用いた実験で明らかにしました。
本研究により、AQP3欠損マウスでは、野生型マウスに比べて、急性肝障害や慢性肝炎症状が軽減することを明らかにしました。またAQP3が欠損したマクロファージでは、肝障害の発症過程でおこる細胞の活性化が抑制され、これにより肝臓での慢性炎症や線維化が減少することが示され、マクロファージのAQP3が慢性肝炎の発症に重要な役割をもつことが明らかになりました。
さらに、AQP3を阻害するモノクローナル抗体を世界で初めて樹立し、急性および慢性肝炎のモデルマウスにおいて、AQP3抗体の投与が肝炎発症を抑制することを確認しました。
今後はさらに、肝炎や肝硬変の病態進行過程でのAQP3の役割を検討するほか、AQP3抗体やAQP3阻害薬の開発を進めることで、新たな肝炎・肝硬変の治療法開発の一助となることが期待されます。
本研究成果は、2020年11月9日に、『Nature Communications』オンライン版に掲載されました。