慶應義塾大学医学部整形外科学教室の中村雅也教授、生理学教室の岡野栄之教授、畑純一訪問研究員らの合同研究グループは、MRIを用いて骨格筋細胞のマイクロ構造を可視化する技術の開発に成功しました。
骨格筋は骨格を動かす筋肉で、形や収縮特性、エネルギー系、疲労耐性の異なる複数の種類の細胞から構成され、トレーニングやリハビリなどの運動や疾患変性により細胞のサイズや細胞種の構成が変化することが知られています。そのため、骨格筋細胞の構成や細胞サイズは、運動量や疲労のしやすさ、疾患の状態を反映した有益な指標となり得ます。
しかし、既存のCTやMRIなどの痛みを伴わない画像医学の技術では、このようなマイクロな細胞構造レベルの情報を得ることは困難であり、また運動器の評価はスポーツテストのような半定量的なものが多く、より定量的な評価法が求められていました。
今回、本研究グループが基礎実験にて開発した新たなMRI撮影法は、水分子の微細構造における変位量をq 空間イメージング法を用いて解析することにより、筋生検と同等のコントラストで筋組織を可視化することに成功しました。
将来、本手法が臨床導入された場合、MRIを用いて約10分程度の短時間で撮影することが可能であり、患者の負担は極めて低いものとして使用できます。今後、運動器疾患の診療や、スポーツ医学における定量評価の実現に大きく寄与することが期待されます。
本研究成果は2019年4月4日(米国東部時間)に『PLOS ONE』オンライン版に掲載されました。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。