慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授の研究グループは、マウスを用いた実験で、目標を達成するまで粘り強く行動を続けるには腹側海馬の活動低下が必須であること、その活動低下はセロトニン神経の活動増加が引き起こすことを明らかにしました。
意欲的に物事に取り組む、という意欲行動の背景には、①目標を設定してはじめの一歩を踏み出すことと、②目標の達成まで行動を継続することの2つがあります。前者の脳内メカニズムについては、本医学部精神・神経科学教室の研究グループを始め多くの研究がなされてきましたが、後者のメカニズムについては、現在まで解明されていませんでした。
研究グループは、不安が高まると活動が高まることが知られている腹側海馬に注目し、意欲行動の継続と腹側海馬活動の関係を調べました。その結果、意欲行動の継続中は、腹側海馬の活動が抑制されていること、目標達成に至らずに行動をやめてしまうと腹側海馬の活動抑制が解除される(元に戻る)ことが分かりました。さらに、腹側海馬の活動抑制は、セロトニン神経の活動亢進によってもたらされることが判明しました。
不安が強いと意欲行動に集中できず、安心が行動の持続・粘り強さをもたらして成功へと導くことは体験からも理解できますが、本研究成果はその根底にある脳神経細胞のメカニズムを解明した科学的根拠を世界で初めて提示するものとなります。
今回の研究成果は、2019年4月15日(英国時間)に神経科学分野の専門誌である『Nature Neuroscience』(オンライン版)に掲載されました。
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