慶應義塾大学理工学部の角山 寛規 准教授、中嶋 敦 教授、およびトヨタ紡織株式会社の大沼 明 主任らは、分子科学研究所のArchana Velloth 研究員、江原 正博 教授、千葉大学大学院工学研究院の一國 伸之 教授および名古屋大学 シンクロトロン光研究センターの田渕 雅夫 教授らと共同で、白金原子6個からなるサブナノクラスターの酸素還元反応(ORR; Oxygen Reduction Reaction)の触媒活性が、燃料電池で用いられている現行の白金標準触媒に比べて、1.7倍程度高い質量活性となることを発見し、広域X線吸収微細構造(EXAFS; Extended X-ray Absorption Fine Structure)の測定と密度汎関数理論(DFT; Density Functional Theory)計算により、活性の高い白金6量体の構造が双四面体であることを明らかにしました。
数個から千個程度の原子・分子が集合したナノクラスターは、原子・分子より大きく、バルクよりも小さく、そのどちらとも違った性質や機能をもっています。その性質が、原子数や組成、荷電状態によって制御できるため、触媒、電子デバイス、磁気デバイスなどへの応用が期待されています。特に、貴金属元素の触媒では、構成原子のほとんどを表面原子とするナノクラスターによる高活性化とともに、希少貴金属の使用量を低減させる技術が注目されています。しかし、これまで気相合成されたナノクラスターの生成量が極めて微量であったため、その触媒活性を燃料電池に応用するという視点から評価することは極めて困難でした。
本研究グループは、サブナノスケールの白金原子の集合体である白金サブナノクラスターを大量に気相合成し、その酸素還元反応(ORR)活性と構造を評価しました。その結果、この白金6量体のサブナノクラスターが白金標準触媒に比べて高い活性をもつことを見出すとともに、その構造を実験と理論との両面から明らかにしました。これらの結果は、燃料電池の基盤技術として利用価値が高いと考えられます。本研究成果は、2019年9月26日(英国時間)に英国王立化学会の学術誌「Chemical Communications」で公開されました。
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