慶應義塾幼稚舎の相場博明教諭とチェコ共和国カレル大学(Charles University)のクラールデイビット(David Král)博士は、30万年前のセンチコガネ科の化石を新種として報告しました。この化石は、2022年9月に行われた慶應義塾高等学校の理科の授業中に、当時高校3年生の八谷(やたがい)航太君が岩石を割って発見したものです。その岩石は、栃木県那須塩原市にある「木の葉化石園」により、その敷地に分布する中部更新統の塩原層群の地層(30万年前)を掘り出し、教材として提供されたものでした。発見した化石は、全長約25mmで全体がほぼ完全に保存されていました。センチコガネ科の仲間で、大顎などの特徴からCeratophyus属の仲間であることがわかりました。
第四紀更新世(30万年前)の昆虫化石は、ほとんどが現生種と言われてきましたが、今回の化石は絶滅種であり、新種のセンチコガネ科化石は鮮新世以降の時代では世界初で、世界でもっとも新しい時代の化石絶滅種となります。また、この昆虫の仲間は草食哺乳類の糞をエサとしていますので、当時どんな動物の糞をエサにしていたのかという謎もあります。よって、今回の発見は日本列島の昆虫の種分化と生物地理を考える上の貴重な資料となる可能性があります。
本研究の成果は、日本古生物学会の国際誌Paleontological Researchで2023年11月30日にオンライン公開されました。