慶應義塾大学薬学部 長瀬健一准教授を中心とする研究グループは、臍帯(へその緒)に含まれる幹細胞から作製したシート状の細胞組織(細胞シート)の治療効果を明らかにしました。
骨髄や脂肪組織から採取される間葉系幹細胞を移植して、難治性疾患の治療を行う再生医療が注目を集めています。また、近年では新たな間葉系幹細胞として、分娩時に破棄される臍帯から採取する間葉系幹細胞が注目を集めています。
そこで本研究では、臍帯から採取した間葉系幹細胞の治療効果を解明しました。ヒト臍帯から採取した間葉系幹細胞を用いて間葉系幹細胞シートと間葉系幹細胞懸濁液を作製し、マウスの皮下組織に移植して生着率と分泌サイトカイン量を測定しました。間葉系幹細胞懸濁液は、移植後にすぐに消失してしまうのに対し、間葉系幹細胞シートは、長期間に渡り生着していることがわかりました。また、肝細胞増殖因子(HGF)、形質転換増殖因子ベータ1(TGF-β1)などの治療に有効なサイトカインを大量に分泌していることがわかりました。
このように、本研究で検討した臍帯由来の間葉系幹細胞シートは、移植後の生着率が高く、分泌するサイトカインが多いことから、効果的な幹細胞治療法として期待できることがわかりました。
本研究成果は、2023年12月10日に国際学術誌『Stem Cell Research & Therapy』に掲載されました