慶應義塾大学文学部心理学研究室、ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)の皆川泰代教授、同大学グローバルリサーチインスティテュートの森本智志特任助教、秦政寛特任助教らは、3-4ヶ月齢の乳児に対して親が授乳や抱っこなどの養育行動をしている際の脳活動を親子で同時計測し、授乳時に特定部位の脳活動が親子で同期していることを明らかにしました。母親側では特に眼窩前頭部と呼ばれる親子愛着に関与する脳部位が同期に強くかかわり、それら脳同期が強いほど、別途行った親子相互作用実験で観察された親子間の愛着指標やその後の2歳辺りでの子どもの言語発達が良好であったことなどが示されました。
10年ほど前から様々な社会場面(例、ゲーム、討論、授業)での複数者の脳活動同期について成人を対象に研究されてきました。これらの研究では円滑な協力行動や作業没頭時に脳活動の同期が得られることなどが示され、脳同期と他者理解を含む社会性との関係も示唆されてきました。しかし、乳幼児については、限られた研究しか行われていません。本研究は3-4ヶ月児という発達初期の乳児でも既に母親との相互作用において、他者と協調する発達初期の脳内基盤が構築され始めていることを示唆します。脳活動とその他の行動や発達特徴の関係の解析からは、親子脳同期に親子愛着が関与し、そのような同期の強い親子間の良好なコミュニケーション関係によって子どもの言語発達が促進されることが推察されました。
本研究成果は「Cerebral Cortex」に掲載予定、オンライン版では2023年10月26日(木)に公開されました。