慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男名誉教授(株式会社坪田ラボCEO)、栗原俊英専任講師、大学病院研修医の姜效炎(ジャン・ショウエン)(研究当時:大学院博士課程)らの研究グループは、ジョージア工科大学Machelle T. Pardue教授、シンシナティ小児病院Richard A. Lang教授らとの国際共同研究で、網膜神経節細胞に発現する非視覚型光受容体OPN5(ニューロプシン)が短波長可視光領域の光を受容することにより近視進行を抑制することを解明しました。
本研究グループは、360nm~400nmの可視光(以下、バイオレット光)が近視進行を抑制することを世界で初めて報告しました。一方、その作用機序については詳細に解明されていませんでした。このたび、同グループは独自に開発した近視モデルマウスを用いて、バイオレット光がマウス網膜内層の網膜神経節細胞に発現する網膜局所の概日リズムや眼内の血管発生、深部体温の調節などに関与する光受容体OPN5で受光されることにより、脈絡膜厚を維持することで近視進行を抑制する仕組みを解明しました。この知見はバイオレット光の近視抑制効果を理論付けるだけでなく、近年新たに発見された非視覚型光受容タンパク質OPN5の機能解明にも繋がり、今後近視進行抑制の標的として有用な介入方法の開発の一助になることが期待されます。
今回の研究成果は、2021年6月1日(米国東部時間)に、学際的総合ジャーナル『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』に掲載されます。オンライン版ではすでに公開されています。