慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の内田裕之専任講師、櫻井準共同研究員は、日本臨床精神神経薬理学会のガイドライン整備事業に参画し、双極性障害の治療におけるさまざまな場面に最善と考えられる薬剤治療について、同学会が認定する専門医の意見を発表しました。
双極性障害の治療は、臨床試験の結果に基づいた診療ガイドラインが国内外で定められているものの、実際の診療場面から得られる見識についてまとめられたものは発表されていませんでした。
そこで、日本臨床精神神経薬理学会では、双極性障害の患者が経験するさまざまな状態をパターンに分け、それぞれにどの薬が最適か、専門医の見解を統合しました。
その結果、リチウムの単独治療や、リチウムと抗精神病薬を組み合わせた併用療法は、双極性障害のさまざまな状態で広く第一選択として推奨されることがわかりました。一方で、抗精神病薬の単独治療や抗うつ薬はいずれの状態でも第一選択とならず、ベンゾジアゼピン系薬剤は極力短い期間での使用が推奨されました。これらの専門医の見識は今後、科学的な研究によって検証されることが必要です。
今後、これらの専門医の見識が双極性障害の患者とその担当医師に共有されることで、この疾患の一つ一つの状態において最善と考えられる薬が明らかになり、双極性障害に対するより良い診療の普及に貢献するものと考えます。
今回の研究成果は、2020年6月17日、ワイリー社が発行する「Bipolar Disorders」(オンライン版)に掲載されました。