慶應義塾大学は北海道大学との共同研究により、呼吸によって吸い込んだ異物の取り込みに働く特殊な細胞を発見しました。これは慶應義塾大学薬学部の木村 俊介 准教授、長谷 耕二 教授、慶應義塾大学医学部 石井 誠 専任講師、北海道大学大学院歯学研究院 武藤 麻未 医員、久本 芽璃 学術研究員を中心とする研究グループの成果です。
呼吸器粘膜は空気中の花粉、埃、微生物に常にさらされています。我々の体はこれらの微細な粒子を認識し免疫システムを働かせることで体を守りますが、ときに過剰に反応しアレルギーを起こします。一方で体内の免疫システムが呼吸器に侵入した異物を体内に取り込む仕組みは不明でした。今回研究グループは、マウスの気管・気管支にM細胞と呼ばれる細胞が存在し、呼吸器粘膜に存在する異物を取り込むことを見出しました。また、この呼吸器M細胞は慢性閉塞性肺疾患モデルマウスなどの様々な呼吸器疾患の病変部に存在することを明らかにしました。さらに、呼吸器M細胞の分化誘導に必須な因子を見出し、これにより呼吸器M細胞を試験管内で培養することに成功しました。
本研究は、呼吸器におけるアレルギー、感染において抗原や微生物が生体に侵入する経路を明らかにしたものであり、呼吸器疾患の発症や悪化のメカニズムの解明につながります。今後は呼吸器M細胞からの抗原取り込みを制御することで、新たな予防・治療法開発等の臨床応用への発展が期待されます。本研究成果は、2019年6月11日(米国東部時間)に国際学術誌『Frontiers in Immunology』電子版に掲載されました。
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