慶應義塾大学理工学部の安藤和也准教授らの研究グループは、次世代電子技術として期待されているスピントロニクスデバイスの性能を最大化するための設計指針を明らかにしました。
現代の電子デバイスは、電子の電気的性質を利用することで動作しています。しかし、電子は電気的性質「電荷」だけでなく、磁気的性質「スピン」も持っており、電子の電荷に加えてスピンを利用することで、高性能・低消費電力な電子デバイスを実現する新しい電子技術としてスピントロニクスがあります。スピントロニクスデバイスの機能を担うのは、磁性体(磁石)の磁化(N極/S極)の電気的な制御です。最近では、磁化を制御するために、デバイス内のスピン軌道相互作用を利用した手法が注目されており、この作用で生まれるトルク(スピン軌道トルク)を用いることで、高速性と不揮発性を兼ね備えた記憶素子をはじめとする様々なスピントロニクスデバイスの駆動が可能となります。
本研究グループは、このようなスピントロニクスデバイスの性能を最大化する鍵となるのは、デバイス内部の電子密度分布の精密な制御であることを見出しました。これにより、原子レベルでのスピントロニクスデバイス設計の重要性が初めて明らかになりました。今後、新現象に関する基礎研究が進み、超高速・低消費電力のスピントロニクスデバイス開発がさらに加速されることが期待されます。
本研究成果は2019年11月2日(現地時間)に米国科学誌「Science Advances」に掲載されます。
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