このたび、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授、三村將教授、公益財団法人東京都医学総合研究所の夏堀晃世主席研究員、大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生理学研究所の小林憲太准教授らの共同研究グループは、マウスを用いた実験で、目標に向かって行動を開始するためには、腹側線条体と呼ばれる脳領域の外側部位に存在する「やる気ニューロン」の活動増加に加え、内側部位に存在する「移り気ニューロン」の活動低下が必要であることを見出しました。
研究グループでは、これまでの研究で、マウスを用いた実験により、意欲障害となる脳内の部位を特定し、「やる気スイッチ」の存在を発見しています。また、目標に向かって行動する時には、腹側線条体と呼ばれる脳領域のうち外側部位に存在する神経細胞(「やる気ニューロン」)を活動させることが必要であり、この「やる気ニューロン」の機能異常によって、行動の開始が障害され、やる気がなくなることが分かっていました。
このたび、研究グループは、「やる気」の一方で、目標とは異なる行動を「抑制」する脳内メカニズムの解明のため、さらに研究を進め、腹側線条体の内側部位の神経細胞の機能に関し、以下の結果を見出しました。
①脳領域のうち内側部位に存在する神経細胞(「移り気ニューロン」)が活性化すると、無駄な行動が増えること。②この神経細胞の活動を抑えることで、目標とは無関係な行動を抑制し、目標に合致する行動を行うこと。③この神経細胞は、意欲そのもの(「やる気ニューロン」)をコントロールしているのではなく、目標が変更された時には活動抑制が外れ、柔軟な行動選択が可能となること。
本研究成果は、2017年9月28日に総合科学雑誌である『Current Biology』に掲載されました。
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