-そういう小川さんも、やがて管理職への道を歩まれるようになるわけです。
小川:一つの転機は、2007年に伊勢丹との業務提携に伴い、伊勢丹から派遣された常務の秘書として仕事をサポートすることになったことでした。常務に付いて東急百貨店全店の管理職と会い、その議事録をまとめた経験から、多くのことを学びました。2012年に今度は食料品部門のバイヤーに抜擢されました。食料品の仕事はいわば「切った張った」の男臭い世界でしたが、常務の「小川さんなら大丈夫」という一言で決まったそうです(笑)。
実際に仕事を始めてみると、これが天職ではないかと思うほど楽しかったです。食べることは大好きでしたし、「商品」「取引先」と「売り場」「お客様」をマッチングさせる創意工夫や関係者とのコミュニケーションにも意欲的に取り組むことができました。食品は作る人の気持ちがそのまま表れる商品です。魅力的な商品を提供される取引先の方々は人間的にも真摯で温かく素晴らしい方が多いと感じています。バイヤーとしてそうした取引先など社外の方々と触れ合う機会が増えてきて感じたのは「三田会」の恩恵です。取引先のオーナーには思いのほか三田会の方が多く、言葉には出さずとも同じ慶應義塾で学んだ者同士の温かいつながりを感じ、大先輩の方々からたくさんのことを教えていただきました。
その後も渋谷再開発に伴う「渋谷 東急フードショー」の全面改装や海外までテナント誘致に出向くなど、食料品バイヤーとして幅広い経験をさせていただきました。
-管理職として、現在どのようなことを意識されていますか。
小川:百貨店は今、変革の嵐の真っただ中にいます。これまでと同じやり方のビジネスでは生き残ることはできません。東急百貨店でもベンチャー企業や異業種とのコラボレーションで新たなビジネスの可能性を開拓するための東急株式会社主催「東急アライアンスプラットフォーム(TAP)」など、新しい時代にふさわしい事業の再構築に取り組んでいます。2019年にTAPで最優秀賞となった日本全国の希少食材の魅力を伝えるプロジェクトを、現場担当者として渋谷ヒカリエ ShinQsでの催事に結びつけることができました。こうしたチャレンジと同時に、築き上げてきた自分たちの資産を見直し、活用することも必要でしょう。
昨年12月、東急グループ各社の次世代経営層を育成する教育プログラム「東急アカデミー」に、東急百貨店を代表して参加。経営者として必要な視座や変革に欠かせないリーダーシップなど、実践的なビジネス力を存分に鍛えていただきました。こうしたチャンスを与えてくれる当社や東急グループにはいつも感謝しています。