受賞したのは、ブラジルの洞窟に生息する「トリカヘチャタテ」という昆虫の研究です。上村准教授は北海道大学の吉澤和徳准教授の声かけで2012年からこの研究に参加しています。通常の昆虫では、オスが交尾器をメスの体に入れて精子を送り込むところ、「トリカヘチャタテ」はメスがオスの体に交尾器を差し込み、精子と栄養物質を受け取ることを明らかにしました。
「トリカヘチャタテは、ブラジルの洞窟内に生息する3 mm程度の小さな昆虫です。2016年に現地を訪れ、ヘッドライトの光を頼りに探し回り、実物とご対面してきました。彼らの生息する洞窟内は食物も乏しく乾いた環境です。コウモリのフンやネズミのフンなどに依存して生活しています。オスはおそらく、自分のとった栄養の一部を精液物質として、メスに提供しているのでしょう。そのプレゼントを手に入れるため、メスが交尾に積極的になり、オスとメスの交尾器の形が取り替わる現象が起きたのではないかと予想します」