大阪大学大学院工学研究科の大学院生のHan Junyiさん(博士後期課程 研究当時)、燒山佑美准教授、武田洋平准教授、櫻井英博教授、同大学先導的学際研究機構の大久保敬教授、同大学大学院基礎工学研究科の岸亮平准教授、慶應義塾大学の酒井隼人専任講師、羽曾部卓教授らの研究グループは、お椀型分子骨格をもつ新しい近赤外発光分子を開発し、非極性溶媒中で66%を超える高い量子収率を得ることに成功しました。本研究では、「曲がった分子構造」を積極的に活用することで、従来困難であった光のふるまいを実現しています。
近赤外光は、生体を透過しやすく背景ノイズが少ないことから、医療イメージングや光デバイスへの応用が期待されています。しかし、一般によく用いられる平面型の分子は、発光に使うためのエネルギーを失いやすく、特に溶液中で強い近赤外発光を示すことは困難でした。
今回、研究グループは、電子を受け取る性質の強いお椀型分子(トリオキソスマネン、TOS)と、電子を与える分子(トリフェニルアミン、TPA)を組み合わせた新しい分子TPA-TOSを設計し、溶媒環境に応じて光の性質が大きく変化することを見出しました。特に非極性の溶媒中では、分子内部で電荷が移動した状態を経由しながら、熱によって再び蛍光発光を示す現象や、りん光を伴う複雑な発光過程が協奏的に起こることで、高効率な近赤外発光が実現されていることが分かりました。
本成果は、分子の「形」に着目することで光物性を制御できる新たな設計指針を示すものであり、将来的には生体イメージング材料や次世代光電子デバイスへの応用が期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Material Chemistry Frontiers」に、1月29日(木)10時(日本時間)に公開されました。