慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師と佐藤和毅教授、同内科学教室(循環器)の山岡広季助教、香坂俊准教授と家田真樹教授、産業医科大学医学部第2内科学の片岡雅晴教授、岐阜大学医学部附属病院検査部・循環器内科の渡邉崇量臨床講師、並びに株式会社グレースイメージング(代表取締役CEO中島大輔)の共同研究グループは、外来の心不全患者さんに対する未来型運動支援・教育啓発プログラム(SaMD)の探索的医師主導治験(多施設共同ランダム化比較試験)を実施し、その有効性と安全性を確認しました。本治験は、慶應義塾大学病院臨床研究推進センターの支援のもと、慶應義塾大学病院を含む3施設で実施されました。
心不全は、心臓の機能が低下して、体に十分な血液を送り出せなくなった状態と捉えられており、高齢化に伴いその患者数は年々増加しています(心疾患に伴う死亡事由の第一位;年間入院患者数20万件以上[令和5年人口動態統計])。心不全への対応としては、適切な薬物治療に加えて、運動や食事など生活習慣の改善を目指した心臓リハビリテーションを行うことが重要とされています。しかし、患者さん側の抵抗感や診療上の制約もあり、現状外来での運動療法は、心不全患者さんの10%以下にしか行われておりません。
そこで、本研究グループは、心不全患者さんの運動を支援し、心不全に関する教育を提供するアプリケーションである「運動支援アプリ」を開発しました。患者さんがFitbitスマートウォッチを常時装着して、そこから歩数や脈拍数などの運動の状況の情報を「運動支援アプリ」が継続的に取得し、体重や生活の質のアンケート情報と合わせて、個々の患者さんに最適な運動を取り入れた体調管理を支援するアプリケーションとなります。
今回の治験によって、「運動支援アプリ」の医療機器の承認に向けた開発を加速させます。新しい医療機器を開発することで、より多くの心不全患者さんがこれまでのエビデンスに即した適切な運動療法を実施できるようにすることにより、患者さんが心不全の進行や再入院なく豊かな生活を送れる社会の実現を目指します。