山梨大学 大学院総合研究部 医学域(医学部薬理学講座及び山梨GLIAセンター)の小泉修一教授及び繁冨英治教授の研究チームは、脳の異常興奮を引き起こすグリア物質を発見しました。本研究は繁冨英治教授と鈴木秀明氏(研究当時、山梨大学医学科学生)を中心として実験を実施しました。また、本研究には九州大学 大学院薬学研究院 津田誠教授、山梨大学 大学院総合研究部 医学域 木内博之教授、慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 脳科学研究部門 田中謙二教授、東京大学 大学院医学系研究科 尾藤晴彦教授らが協力しました。
さまざまな脳の疾患で、神経細胞が過剰興奮することにより、神経細胞の異常・脱落・変性などが起こることが知られています。これらの変化を引き起こす原因の一つとしてグリア細胞の役割が注目を集めています。この度、脳の異常興奮(神経過興奮)を引き起こすグリア物質として「IGFBP2」を見出しました。
アルツハイマー病、てんかん、脳卒中などのさまざまな脳疾患において、グリア細胞の一種「アストロサイト」は共通してP2Y1受容体を発現上昇させて「疾患関連アストロサイト」となります。しかし、P2Y1受容体を高発現するアストロサイト(疾患関連アストロサイト)がどのようにこれらの脳疾患と関与しているのかについては殆どわかっていませんでした。今回の研究ではP2Y1受容体を強制的に高発現させた人工的な疾患関連アストロサイトを有するマウスを作成し、1) 疾患関連アストロサイトが産生・分泌する新規グリア物質IGFBP2を見出し、2) これにより神経過興奮が起こることを見出しました。更に、実際のてんかんや脳梗塞などの複数の脳疾患モデルにおいて、IGFBP2が疾患関連アストロサイトで高発現していることを見出しました。本研究成果は日本時間2024年8月8日のNature Communications誌(オンライン版)に掲載されました。