理化学研究所(理研)生命医科学研究センター皮膚恒常性研究チームの福田桂太郎上級研究員(慶應義塾大学医学部皮膚科学教室非常勤講師)、天谷雅行チームリーダー(慶應義塾大学医学部皮膚科学教室教授)、脳神経科学研究センター細胞機能探索技術研究チームの宮脇敦史チームリーダー、慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の伊東可寛専任講師らの国際共同研究グループは、皮膚バリア機能を担う皮膚最外層の角層が、角層pH(水素イオン指数)の三層構造を形成し、角層の恒常性を維持することを発見しました。
本研究成果は、皮膚バリア機能の低下により誘導されるアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対する治療戦略の開発に役立つと期待できます。
今回、国際共同研究グループは、角層のpHおよび皮膚に生息する細菌をライブイメージングする技術を開発し、生きたマウスの角層を観察しました。角層は、死んだ角化細胞である角質細胞が単に堆積しているのではなく、下から弱酸性-酸性-中性と分化し、角層pH三層構造を形成していました。角層上層は、環境に応じてpHが変化し、健常状態では皮膚に生息する細菌により中性になっていました。炎症時に増殖する黄色ブドウ球菌は、角層上層と中層の境界部に侵入し、増殖していました。また、酸性を示す角層中層は、細菌侵入を防御する働きがあることも分かりました。さらにこの角層の三層構造は、角質細胞を剝離するタンパク質分解酵素を角層上層でのみ活性化させ、角層の厚みを一定に保つのに適した構造であることが判明しました。角質細胞は死細胞であっても、分化し角層を維持する巧妙な仕組みを形成していました。
本研究は、科学雑誌『 Nature Communications 』オンライン版(5月15日付)に掲載されました。