慶應義塾大学医学部先端医科学研究所がん免疫研究部門の籠谷勇紀教授、吉川聡明助教らの研究グループは、タカラバイオ株式会社との共同研究により、がんに対する免疫療法であるキメラ抗原受容体(CAR)-T療法の効果と安全性を同時に高める人工遺伝子の開発に成功しました。
CAR-T療法は、患者自身の血液から取り出したT細胞という免疫細胞を体の外で加工して注射する治療法です。これまでの薬では治療が望めなかった難治性の血液がんに対する治療法として臨床で用いられており、他のがんに対しても応用が期待されています。しかし、多くの場合、がん細胞を完全に消し去る前に注射されたCAR-T細胞が消えてしまい、効果が持続しません。また、逆に効果が高かった患者ではCAR-T細胞の過剰な増殖により重い副作用が起こることがあり、有効性と安全性の両面で改良が必要です。
本研究では、サイトカインという血液中に放出される物質の働きを制御できる人工サイトカイン受容体遺伝子を開発し、これを組込んだCAR-T細胞が長期間にわたりがんを攻撃し、かつ副作用に関わる有毒なサイトカインを無効化できることを示しました。
本研究成果は、2024年4月26日(日本時間)に、米国科学誌 Cell Reports Medicine に掲載されました。