慶應義塾大学医学部漢方医学センター 呉 雪峰(ゴ セッポウ)研究員(研究当時:慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程)、吉野 鉄大特任講師、三村 將名誉教授、株式会社ツムラ西 明紀、株式会社DeNAライフサイエンス石田 幸子らの研究チームは、MYCODE Researchのもとで本研究の参加に同意した日本の成人女性約1200人を対象に、冷えの自覚症状に関する初の網羅的なゲノム解析を実施し、冷え症と関連するゲノム領域を見つけました。
冷え症は、腰や手足などを冷たく感じ、痛みなどを伴うことが知られている状態です。女性に多く、その原因は、女性ホルモンの乱れや自律神経の失調など、さまざまな要因が考えられています。今回の研究の結果、KCNK2遺伝子近傍のrs1869201一塩基多型と、TRPM2遺伝子上のrs4818919遺伝子多型などが、冷え症のリスクと関連していることが示唆されました。これらの一塩基多型は、それぞれ冷え症に関連するタンパク質の発現量を変化させることで、冷え症のリスクを高めると考えられます。
これらの遺伝子に由来するタンパク質は、温度だけでなく痛みの感度にも関連しているため、冷え症の患者がさまざまな疼痛疾患を合併していることを説明できる可能性があります。さらに、一部の生薬がこれらのタンパク質の作用に影響することも報告されており、漢方薬が冷え症に有効であるメカニズムの解明にも重要な意義をもっていると考えられます。
なお、この研究成果は、2024年1月22日(日本時間)に国際科学雑誌 Scientific Reports に掲載されました。また、今回の研究成果をもとに冷え性判定方法、及び冷え症タイプ判定方法についての特許出願も行いました。