慶應義塾大学
福井県立大学
慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程の紫藤拓巳(研究当時、現・琉球大学理学部研究員)、福井県立大学の西辻光希准教授、慶應義塾大学理工学部生命情報学科の堀田耕司准教授らの研究グループは、北里大学未来工学部の榊原康文教授、岡浩太郎教授らと共同で、脊椎動物(ヒトを含む)に最も近縁な動物群である「被嚢類※1(ホヤのなかま)」のうち、透明な胚をもつ侵略的外来種ホヤ Ascidiella aspersa(和名:ヨーロッパザラボヤ)について、高品質な全ゲノム配列を解読しました。
研究グループはさらに、すでに公開されている他の被嚢類のゲノム情報を集約し、ヨーロッパザラボヤを含む計 38 種・3 綱の被嚢類についてそれぞれの「遺伝子の設計図」(遺伝子モデル※2)を高精度に再構築しました。さらに、これらのリソースを誰でも横断的に比較できる統合ゲノムデータベース「TUNOME(チュノーム)」として公開しました。被嚢類のゲノムをこれほど大規模かつ広範囲に比較した研究は、これまで行われていませんでした。
本成果は、これまで治療選択肢が限られていた乳幼児の重症大動脈基部疾患に対する積極的な外科治療戦略を提示するものであり、小児心臓外科学ならびに先天性心疾患診療の発展に大きく寄与することが期待されます。
比較解析から、被嚢類のゲノムは、サイズが種間で最大約 17 倍も異なり、塩基組成(GC 含量※3)も大きく違うなど、ひとつの動物群でありながら際立って多様であることが分かりました。また、サルパ類(タリア綱)などで DNA を修復する遺伝子の一部が共通して失われていることや、ヨーロッパザラボヤが遺伝子のコード領域(CDS)において被嚢類のなかで最も高い GC 含量をもつことなど、綱ごとに特徴的なゲノム進化を遂げてきた様子が明らかになりました。さらに、ヨーロッパザラボヤは紫外線で傷ついた DNA を修復する「ヌクレオチド除去修復(NER)」に関わる遺伝子がとりわけ卵で高く発現していることも発見しました。
本成果は、これまでゲノム情報が乏しかった「非モデル生物」を含む被嚢類を対象にして、生物の発生や進化のしくみや生体透明性の進化を探るための重要な基盤となるものです。本研究成果は、2026年8月4日に国際学術誌『BMC Genomics』に掲載されました。
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