慶應義塾大学医学部内科学教室(腎臓・内分泌・代謝)の伊藤裕前教授 (現予防医療センター特任教授、同大学名誉教授)、林香教授、山口慎太郎専任講師、眼科学教室の坪田一男教授(研究当時。現在同大学名誉教授)、薬理学教室の安井正人教授、生理学教室の岡野栄之教授らの研究グループは、抗老化候補物質として注目されているNicotinamide mononucleotide (ニコチンアミド・モノヌクレオチド、以下NMN)が、健康なヒトにおいて長期間安全に内服可能であること、糖代謝改善作用を呈する可能性があることを明らかにしました。
これまでに動物を用いた研究により、NMN投与によって、さまざまな臓器に存在するNicotinamide Adenine Dinucleotide (ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド、以下NAD+)が増加し、長寿遺伝子サーチュインを活性化することで、加齢に伴い生じる疾病が抑えられることが明らかとなりました。同研究グループでは、2019年に世界で初めてヒトにおいて、NMNの単回内服が安全であること、内服量に応じて体内で代謝されることを報告しました。
今回研究グループは、2019年から健康な成人日本人男性14人を対象に、NMNがヒトに安全に長期投与できるかを調べる臨床研究を行い、NMNが健康なヒトに①安全に長期投与可能であること、②投与した期間に応じて体内のNAD+量が増加すること、③軽度の耐糖能障害があるヒトでは糖代謝を改善する可能性があること、を確認しました。
本研究は、超高齢社会を迎えた日本において、加齢に伴い生じる疾病の予防戦略の開発に役立つことが期待されます。本成果は、2024年1月6日にEndocrine Journal 誌に掲載されました。