私たち人間の体を構成している炭素や酸素などの元素は、もともと大質量星の内部で核融合反応によって作り出され、星の進化の最終段階である重力崩壊型超新星爆発によって宇宙空間にばらまかれて存在しています。しかし、超新星爆発のメカニズムは未だに理論的によくわかっていません。
慶應義塾大学理工学部の山本直希准教授と中央研究院(台湾)のヤン・ディールン助研究員は、電子やニュートリノという素粒子のカイラリティの性質を考慮して、素粒子の量子多体系の時間発展を系統的に解析する新しい理論的手法を開発しました。この手法を重力崩壊型超新星に応用し、ニュートリノを放出する際の反作用によって、磁場の方向に電流が生じるという現象を明らかにしました。さらに、この現象から、宇宙最強磁場をもつ天体であるマグネターの磁場や、パルサーキックと呼ばれる天体現象を同時に説明しうるメカニズムが提案されました。これらの新しい現象とメカニズムは、重力崩壊型超新星の進化を理解する上で重要な知見を与えると期待されます。
本研究成果は、2023 年 7 月 6 日(現地時間)に米国物理学会誌『Physical Review Letters』のオンライン版にて公開されました。