ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体関連疾患は、従来は多発性硬化症(MS)や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、あるいは視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)と診断されていた中枢神経脱髄疾患患者の一部で、血清あるいは髄液中にMOG抗体が見出されたことを契機に近年急速に研究が進展し、新たな中枢神経系自己免疫疾患として疾患概念が確立されつつあります。しかし、これまでわが国では全国的な疫学調査は行われておらず、患者数や検査所見、治療やその有効性などの詳細は不明でした。
東北医科薬科大学医学部老年神経内科学の中島一郎教授、中村正史講師らの研究グループは、千葉大学、慶應義塾大学、静岡社会健康医学大学院大学との共同研究によりMOG抗体関連疾患の全国疫学調査を行い、患者数、粗有病率、粗罹患率を推計し、発症病型、血液検査やMRI検査などの検査所見、治療内容とその有効性、予後を集計・解析しました。
本研究は、今後の指定難病への登録、MOG抗体検査の保険収載、治療法の開発を進める上で重要な報告です。本研究成果は、2023年3月10日付けで、Multiple Sclerosis Journal 誌(オンライン版)に掲載されました。
なお、本研究は厚生労働省難治性疾患克服研究事業「神経免疫疾患のエビデンスに基づく診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証」(研究代表者:千葉大学桑原聡先生)として、厚生労働省科学研究費補助金(20FC1030)の支援を受けて行われました。