掛谷秀昭 京都大学大学院薬学研究科 教授、Yanjun Pan 同博士後期課程学生、堂前直 理化学研究所環境資源科学研究センター ユニットリーダー、西尾和人 近畿大学医学部 教授、平野秀典 慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任准教授らの研究グループは、アスパラギン合成酵素(ASNS)を阻害する微生物代謝産物ビサボスクアールA(Bis A)を見出し、非小細胞肺がんに対する抗がん剤シーズとしての有望性を明らかにしました。
アスパラギン合成酵素(ASNS)は、L-グルタミン(L-Gln)を窒素源として、L-アスパラギン酸(L-Asp)からL-アスパラギン(L-Asn)を生合成する酵素であり、L-Asnのde novo合成における律速酵素です。ASNSは、肺がん、大腸がん、急性リンパ性白血病などで高発現が報告されており、がんの悪性化・再発や薬剤耐性に寄与する分子標的として注目されていますが、既存のASNS阻害剤は低い細胞膜透過性や化学構造の多様性の少なさなどの問題を抱えています。本研究グループは、新規ファーマコホアを有するBis Aを単剤処理あるいはL-アスパラギナーゼやmTORC1阻害剤と併用することで、顕著な抗がん活性を示すことを明らかにし、がん代謝特性を標的とする新規抗がん剤開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2023年10月30日に「 European Journal of Pharmacology」のオンライン版に掲載されました。