慶應義塾大学医学部解剖学教室の久保田義顕教授は、同整形外科学教室、同生理学教室、同内科学教室(循環器)、共同利用研究室(細胞組織学)、国立国際医療研究センター研究所、長崎大学、新潟大学、滋賀医科大学、熊本大学、藤田医科大学、東海大学、米国ミシガン大学との共同研究で、骨の血管構造に関して、これまで知られてこなかった新たな血管サブタイプが骨の端にあることを発見し、骨の発生や造血において、この血管が深くかかわっていることを明らかにしました。
骨はからだを支え、内部の脳や臓器を守る役割だけではなく、骨の内部(骨髄)には血液幹細胞が存在し、日々赤血球や白血球などの血球を産生し、全身に送りとどけます(造血)。この骨格としての役割と、血液産生の役割の両方に重要なのが骨髄の血管です。しかし、他のやわらかい組織とは違い、組織を細かく観察するために骨の「切片を切る」という作業が、その硬さゆえに難しく、他の臓器の血管に比べ、骨髄の血管に関する理解はあまり進んでいませんでした。
本研究は、従来の組織切片の作成法の改良、シングルセルトランスクリプトーム解析、新規遺伝子改変マウスの作成により、これまで見つかっていなかった骨髄血管のサブタイプが骨端部に存在することを発見し、骨の発生、造血に重要なことを見出しました。将来的には、骨粗鬆症や大腿骨頸部骨折などの治療技術への応用が期待されます。
本研究成果は2023年10月5日(米国東部時間)のNature Cell Biologyオンライン版に掲載されました。