神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)の高野俊也研究員および下野誠通グループリーダー(横浜国立大学 大学院工学研究院 准教授)、慶應義塾大学医学部内科学教室(呼吸器)の正木克宜助教、慶應義塾大学病院薬剤部の中田英夫薬剤師らを中心とする研究グループは、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療で使用する薬剤吸入器に用いる吸入動作モニタリングデバイスを開発しました。
<ポイント>
- 慣性計測装置により吸入器使用時のカバーの開閉角度や傾きを検知することで、吸入が正しく行われたかどうかの判定を実施
- 既存の薬剤吸入器に取り付けるだけで、複雑な設定等なく使用可能
- 自宅使用時等の医師や薬剤師が介在しない状況においても吸入器使用動作の観測が可能
気管支喘息等の呼吸器系の疾患の治療には、薬剤吸入器が広く使用されています。吸入器を用いて服薬を行う吸入療法は極めて有効な治療法ですが、半数以上の患者が不適切な使い方により薬剤を満足に吸入できていないと言われており、医師や薬剤師等の医療従事者による綿密な対面指導が不可欠となっています。このデバイスでは、慣性計測装置を用いることで薬剤吸入時の蓋開け・傾きなどの動作を検知し、吸入が正しく行われたかどうかを判定することが可能です。本デバイスを用いることで患者の吸入器使用状況のモニタリングが可能となり、医療従事者の負担軽減及び吸入薬による治療効果の向上が期待されます。
本研究の成果は、2022年6月5日(日本時間)に国際学術誌である IEEE/ASME Transactions on Mechatronics のオンライン版に掲載されました。