理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター数理科学チームの桑原知剛研究員(研究当時、現開拓研究本部桑原量子複雑性解析理研白眉研究チーム理研白眉研究チームリーダー、量子コンピュータ研究センター量子複雑性解析理研白眉研究チーム理研白眉研究チームリーダー)と慶應義塾大学理工学部の齊藤圭司教授の共同研究チームは、量子力学に従う多粒子系(量子多体系)の熱平衡状態では、一般に長距離に及ぶ「量子もつれ」が存在しないことを示しました。
本研究成果は、量子機械学習を含む量子計算に関する手掛かりを多く与えるとともに、有限温度で観測されるさまざまな量子的物理現象に関与する量子もつれの分類研究に寄与すると期待できます。
量子コンピュータを使った量子計算には、量子もつれが本質的な役割を果たすため、量子もつれの有限温度における効果を解き明かすことは重要な未解決問題の一つでした。
今回、共同研究チームは二つの領域で定義される標準的な2者間の量子もつれの量を解析的に評価し、十分離れている二つの領域間に生じる量子もつれは有限温度において劇的に小さくなることを突き止めました。この結果は、一般的な量子多体系において、2者間の量子もつれは絶対零度(約-273℃)では存在し得ますが、有限温度では、特殊な3者間量子もつれ以外は生き残ることができないことを示しています。
本研究は、オンライン科学雑誌『Physical Review X』(4月27日付)に掲載されます。