慶應義塾大学医学部皮膚科学教室を中心とする共同研究グループは、自身の体を攻撃する抗体を産生する自己反応性B細胞が制御される新たな仕組みを明らかにしました。
ヒトの体には、ウイルスや細菌等の病原体を攻撃する抗体を作り出すB細胞が存在し、外敵から身を守っています。さまざまな病原体に対応する抗体を産み出すために多様なB細胞が体内では作られています。その過程で自身の体を攻撃するB細胞が生じることがあり、その結果として自己免疫性疾患が引き起こされます。健常人では自身に反応するB細胞は活動が抑制されており自己免疫疾患の発症が抑えられています。この仕組みを明らかにすることは自己免疫疾患の病態を理解する上で非常に重要です。
本研究は皮膚の表皮細胞間の接着に関わる分子であるデスモグレイン3(Dsg3)に対するIgG抗体によって生じる自己免疫疾患、尋常性天疱瘡の病態に関連して、Dsg3に反応するB細胞がどのように生体内で制御されるかをマウスで明らかにしました。すなわち、正常な状態ではDsg3反応性のB細胞が病原性を持たないIgM抗体を産生する状態でとどまり、病原性を持つIgG抗体を産生する状態へのクラススイッチを起こさずに自己免疫が制御されるという特徴的な免疫状態を見出しました。この成果は天疱瘡をはじめとする自己抗体が病態に関わる自己免疫疾患の新たな治療・予防法の開発につながることも期待されます。
本研究成果は2022年2月1日(米国中部時間)に米国科学誌『Journal of Immunology』に掲載されました。