慶應義塾大学大学院理工学研究科の松坂美月(修士1年生)、林恭平(修士2年生)、同大学理工学部の海住英生准教授らは、北海道大学電子科学研究所の西井準治教授、藤岡正弥助教、東北大学多元物質科学研究所の芥川智行教授、茨城大学大学院理工学研究科の小峰啓史准教授と共同で、分子を挟んだ磁気ナノデバイスにおいて室温での磁気抵抗(MR)効果の観測に成功しました。
2つの磁性体の間に有機分子を挟んだ有機スピンバルブ(OSV)素子では、磁場によって抵抗が変化する磁気抵抗効果を示します。このOSV素子をナノスケール化すると、巨大なMR効果が発現することが報告されていましたが、これまでほとんどの研究は低温での実験に限定されていました。今回、磁性薄膜のエッジを用いた新たなナノ接合作製技術を開発し、さらに、磁性体間に挟む分子として高移動度分子に注目した結果、室温でのMR効果の観測に成功しました。この成果は「ナノ科学」「スピン」「分子」が融合した新しい学際領域を切り拓くものです。
本研究成果は2022年10月12日(英国時間)に『Nanoscale Advances』(オンライン、英国王立化学会)に掲載されました。