慶應義塾大学新川崎先端研究教育連携スクエアを研究拠点とする慶應フォトニクス・リサーチ・インスティテュート(KPRI)の小池康博教授らの研究グループは、データセンター、車、医療等の短距離通信で課題となっている通信エラーをほとんど発現しないプラスチック光ファイバ(以下、エラーフリーPOF)を開発しました。さらに、このエラーフリーPOFを用いることによって、データセンター通信の次世代標準であるPAM4(Four-level Pulse Amplitude Modulation)方式による毎秒53ギガビットの信号を、現在必要とされている誤り訂正機能を用いることなく、エラーフリーで伝送することに成功しました。
AI、IoT時代の到来により、サーバやコンピュータ機器において大容量かつ高品質のデータ通信が求められていますが、信号の高速化に伴ってデータを誤りなく伝送することが困難となってきています。現行の多くの通信システムでは、伝送時に生じる誤データを補正するためFEC(Forward Error Correction)に代表される誤り訂正機能や波形整形回路が用いられていますが、これらの信号処理によって通信システムの消費電力や通信遅延が増大することが大きな問題となっています。
今回開発したエラーフリーPOFは、上記の通信システムにおける誤り訂正機能や波形整形回路を不要とするものであり、通信システムの発熱、遅延、コストの問題を一気に解決することができます。本成果は、データセンターの省電力化のみならず、自動車、医療、ロボティクス等における大容量リアルタイム通信への道を切り拓くものであり、エラーフリーPOFは次世代情報産業のコアテクノロジーとなることが期待されます。
本研究成果の一部は、国際学術誌「Optics Letters」(2021年8月1日)に掲載されました。また、本研究成果の詳細は、2021年11月に開催されるプラスチック光ファイバ国際会議(POF2021)にて発表されます。