慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室の髙松公晴共同研究員、田中伸之専任講師、大家基嗣教授、腫瘍センターゲノム医療ユニットの西原広史教授らの研究グループは、次世代免疫チェックポイント阻害剤の標的分子であるLAG-3、TIM-3、TIGITを用いた腎細胞癌の新規分類を開発しました。
通常、体内では免疫細胞が癌細胞を異物として認識し、攻撃することで癌細胞を排除しています。しかし、癌細胞は免疫チェックポイント分子と呼ばれるタンパク質を発現することで免疫細胞の攻撃から逃れています(癌免疫逃避機構)。癌免疫逃避機構をブロックする免疫チェックポイント阻害剤は多くの癌治療で使用されていますが、治療効果が不十分な症例が問題となっています。そのため次世代の免疫チェックポイント阻害剤の開発が行われており、LAG-3、TIM-3、TIGITは有望な標的分子として注目されています。今回開発した新規分類により、次世代免疫チェックポイント阻害剤の治療候補症例が明らかになりました。腎細胞癌症例のLAG-3、TIM-3、TIGITの発現を細胞レベルで詳細に評価すると、各症例はLAG-3、TIM-3、TIGITのいずれかが優位性を持って発現していました。詳細な癌微小環境の評価により、LAG-3を優位に発現する症例は癌細胞を攻撃する免疫環境が弱っていることが明らかになり、その生命予後も不良なことがわかりました。本研究が発展し、次世代免疫チェックポイント阻害剤の効果予測が可能となれば、新規薬剤を有効な患者さんへ届けることが可能になるとともに、医療費増大の抑制にもつながることが期待されます。
本研究成果は、2021年9月20日(英国夏時間)に英国科学誌『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。